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BSテレ東の『グロースの翼』で紹介された中里スプリング製作所の事例は、多くの中小企業経営者にとって「目から鱗」の内容でした。
この記事では、同社のユニークな「好き嫌い経営」を整理し、後半では中小企業診断士試験(特に事例III:生産・技術)の視点から、この事例が持つ戦略的な意味を深掘りします。
「損得」より「好き嫌い」で会社は変わる?
中里スプリング製作所の挑戦
群馬県にある社員21人のばね製造会社、中里スプリング製作所。かつては倒産寸前の下請け工場でしたが、2代目・仲里良一社長のもとで、常識破りの変革を遂げました。
1
驚きの「嫌な客を切る」権利
同社では、社員に「どうしても好きになれない顧客」との取引を断る権利を与えています。これまでに取引を中止したのは49社。
「理不尽な要求」や「高圧的な態度」の顧客を排除することで、社員のストレスを劇的に減らし、「日本一楽しい町工場」を目指しています。
2
全国2,100社へのリスク分散
「客を選ぶ」ことは、裏を返せば「特定の顧客に依存しない」強さが必要です。
かつては県内15社への下請け依存でしたが、現在は47都道府県2,100社以上と直接取引。この圧倒的な顧客基盤があるからこそ、不誠実な顧客に「NO」と言える交渉力が生まれています。
3
「規模」ではなく「存続」を追う
仲里社長は、無理な拡大を追い求めません。
- ✅ 利益=会社存続費
- ✅ 適正規模(町工場)の維持
この考えのもと、筋肉質な経営を貫き、「100年続く企業」という持続可能性を最優先しています。
【中小企業診断士・事例III対策】
中里スプリングに学ぶ「製造業」の戦略的示唆
中小企業診断士試験、特に事例III(生産・技術)の視点から、この事例を「強み・弱み・戦略」のフレームワークで分析してみましょう。試験対策としての重要ポイントは以下の3点です。
① 下請構造からの脱却と「営業力」の強化
事例IIIでは、しばしば「特定顧客への依存」による売上減少や単価叩きが問題となります。中里スプリングの解決策は、「製造業における営業力の重要性」を再定義した点にあります。
💡 戦略的示唆
社長自らが年間60件の新規開拓を行うことで、「取引先の分散化」を実現。これにより、単価決定権(プライシング・パワー)を自社に取り戻し、外部環境の変化に強い体質を構築しています。
② 従業員のモチベーション向上と「品質」の相関
生産管理の要諦は「Q(品質)・C(コスト)・D(納期)」ですが、これらを支えるのは「人」です。「嫌な客を切る」という施策は、組織論における「心理的安全性の確保」として解釈できます。
💡 戦略的示唆
不当な要求による現場の混乱を排除することで、生産プロセスに集中できる環境を整備。結果として、作業意欲(モラール)の向上 → 技術力の研鑽 → 製品品質の向上という正の循環を生み出しています。
③ 経営資源の集中と「持続可能性」
中小企業にとって、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)は限られています。むやみな規模拡大(設備投資の肥大化)は、固定費の増大を招き、不況時のリスクを高めます。
💡 戦略的示唆
「町工場」としての適正規模を維持し、高付加価値な多品種少量生産に特化。これにより、過度な設備投資を避けつつ、キャッシュフローの安定と「100年企業」としての存続を図る戦略は、中小製造業の勝ち筋の一つと言えます。
まとめ:経営者の「覚悟」が現場を救う
中里スプリングの事例が教えてくれるのは、「社員を守るための仕組み作りには、経営者の圧倒的な行動力が不可欠である」ということです。
「好き嫌い」で仕事を選ぶ自由は、経営者自身が泥臭く新規顧客を供給し続けるという責任の上に成り立っています。
「利益は、会社を存続させるためのコストである」
この言葉は、数値目標に追われがちな現代の経営において、立ち返るべき本質ではないでしょうか。