【事例Ⅰ・Ⅲ対策】債務超過から売上39億円へ。富岡食品に学ぶ「自律型組織」と差別化戦略の本質
【事例Ⅰ・Ⅲ対策】債務超過から売上39億円へ。富岡食品に学ぶ「自律型組織」と差別化戦略の本質
― グロースの翼(2025年12月28日放映)から読み解く二次試験思考 ―
中小企業診断士の二次試験では、「企業の物語」をどう答案に変換するかが問われます。今回取り上げるのは、埼玉県深谷市の老舗豆腐メーカー・富岡食品です。かつては「安売りの富岡」と揶揄され、債務超過の危機に直面していた企業が、売上39億円規模へと成長を遂げました。
この事例が学習素材として優れているのは、以下の3つが一つの企業に凝縮されている点です。
- ✅ 事業承継による組織改革(事例Ⅰ)
- ✅ 加工技術による差別化と生産性向上(事例Ⅲ)
- ✅ 直販による多角化・ブランド戦略(事例Ⅱ的要素)
この記事では、受験生の目線から「答案化できる要素」を整理していきます。
📋 全体像を「答案分類マップ」で把握する
まず大切なのは、与件文を読んだとき「この情報はどの事例の箱に入るか」を瞬時に判断する力です。富岡食品のケースを3つの事例に分類してみましょう。
- 社長が最後に発言 → 心理的安全性の確保
- 改善提案制度 → 権限委譲・主体性の醸成
- 社長室廃止 → フラット組織の構築
- 自律型組織 → 組織活性化
- 油揚げ加工への特化 → 差別化集中戦略
- 釜炊き技術 → 工程ノウハウの蓄積
- 手間のかかる製品へ → ニッチ戦略
- 改善提案100件超 → QCD改善
- 直営いなり店 → 直販チャネルの構築
- 祖母の物語 → ブランドストーリーの活用
このように一つの事例を分類する習慣をつけるだけで、本番での思考スピードは格段に上がります。
🏢 事例Ⅰの視点:社長が「最後に話す」意味
富岡社長が導入したルールの中で、とりわけ印象的なのが「社長は必ず最後に発言する」というものです。一見シンプルなルールですが、診断士的にはここから多くのキーワードを読み取ることができます。
社長が先に意見を述べてしまうと、社員は反論しにくくなり、結果としてトップダウン型の意思決定が固定化されます。あえて発言を最後に回すことで、現場の声が上がりやすくなり、心理的安全性が確保されます。これはボトムアップ型の組織風土改革そのものです。
💡 ミニ答案テンプレ(事例Ⅰ)
与件ヒント:社長が意見を抑える/社員が反論できる
答案表現例:「トップダウン型組織から脱却し、心理的安全性を高めることで現場提案を促進し、組織活性化を図った。」
⚙️ 事例Ⅲの視点:「面倒な工程」にこそ差別化がある
富岡食品が選んだのは、効率化とは真逆の道でした。油揚げの低温・高温二段階揚げ、特注カゴによる釜炊き、手間のかかる加工食品への特化。他社が敬遠する工程にあえて踏み込むことで、技術的な参入障壁を築いたのです。
これは事例Ⅲにおける典型的なパターンで、次の流れに整理できます。
価格競争の回避 → 工程差別化 → 技術ノウハウの蓄積 → 参入障壁の形成
💡 ミニ答案テンプレ(事例Ⅲ)
与件ヒント:他社がやりたがらない工程/試行錯誤
答案表現例:「加工難易度の高い製品へ集中することで技術的参入障壁を構築し、価格競争から脱却した。」
🔀 改善提案制度は「事例Ⅰ×Ⅲのクロス論点」
年間100件を超える改善提案。段ボールの入り数変更だけで年間73万円のコスト削減。この改善提案制度は、単なる現場改善にとどまりません。
事例Ⅰの視点では従業員の主体性やモチベーション向上として評価でき、事例Ⅲの視点では生産性向上やコスト削減として捉えられます。つまり、一つの施策が二つの事例にまたがる「クロス論点」なのです。
💡 答案テンプレ(クロス論点)
答案表現例:「改善提案制度により現場の知見を活用し、QCD向上と従業員エンゲージメントを同時に高めた。」
🏪 直販店は”多角化”ではなく「ブランド戦略」と読む
直営のいなり店を出店したという事実だけを見ると、新規事業による多角化に映るかもしれません。しかし診断士的に重要なのは、その本質がブランド戦略である点です。
祖母の味というストーリーを核に据え、BtoBからBtoCへの転換を図りながら、自社ブランドの認知を強化し、市場との直接接点を持つ。これは単なる多角化ではなく、ブランド構築の一環として捉えるのが正解です。
💡 答案テンプレ(事例Ⅱ的要素)
答案表現例:「直販チャネルを構築し顧客接点を拡大することで、自社ブランドの確立と収益基盤の強化を図った。」
📝 今回の事例から使える「頻出答案フレーズ」
最後に、この事例から抽出できる汎用性の高い表現をまとめておきます。与件文が変わっても構造はほぼ同じなので、引き出しとして持っておくと本番で強力な武器になります。
- 🔹 心理的安全性を高める
- 🔹 現場提案を促進する
- 🔹 権限委譲により主体性を醸成する
- 🔹 工程差別化により参入障壁を形成する
- 🔹 価格競争から脱却する
- 🔹 直販チャネルでブランド力を向上させる
- 🔹 改善提案制度でQCDを改善する
📌 まとめ:富岡食品は”答案の宝庫”だった
この事例が二次試験の学習素材として優れている理由は明確です。事業承継による組織改革は事例Ⅰの王道テーマ、技術差別化による競争優位は事例Ⅲの定番パターン、そして直販によるブランド戦略は事例Ⅱの頻出論点。つまり、答案構造そのものが一つの企業に詰まっています。
そして何より印象的なのは、社長が答えを与えるのではなく、社員が自ら考える組織を作ったということ。二次試験も同じです。正解を探すのではなく、与件から構造を読み取る。
次に企業事例を目にしたとき、ぜひ自分に問いかけてみてください。
「これは事例Ⅰなのか? それとも事例Ⅲなのか?」
分類できた瞬間、答案はもう半分できています。
▼ 今回取り上げた企業はこちら
富岡食品株式会社|公式サイト
埼玉県深谷市に本社を構える老舗豆腐・油揚げメーカー。独自の釜炊き技術と加工技術で、業務用油揚げを中心に全国へ展開しています。
www.tomiokafoods.co.jp