2024年におけるコンプライアンス違反による倒産件数は、過去最多となる320件に達しました。これは前年と比較して66.6%の増加となり、企業活動の透明性や信頼性がより一層求められる時代へ突入していることを示唆しています。
近年、コンプライアンス違反に対する社会の目は格段に厳しくなり、違反の発覚とともに信用が一気に失墜するケースが増えています。倒産に至るまでのスピードも加速傾向にあり、企業が「法令順守」をいかに重要視するかが経営の命運を左右する時代が到来しました。
株式会社東京商工リサーチや帝国データバンクなどが発表したデータをベースに、2024年におけるコンプライアンス違反倒産の特徴や具体的事例、その背景について掘り下げてみます。
主要な統計データと事例:増加の要因を探る

2024年のコンプライアンス違反倒産に関する数字は以下のとおりです(参考:
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1200892_1527.html、
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250124-compliance2024/)。
- 総倒産件数:320件(前年比66.6%増)
- 負債総額:3,790億6,400万円(前年比28.2%増)
- 主な違反類型
- 税金関連:176件(前年比91.3%増)
- 不正受給:39件(前年比69.5%増)
- 粉飾決算:20件(前年比42.8%増)
こうした急増の背景には、新型コロナ禍での支援策終了や経営環境の変化が大きく影響しているとされています。特に税金関連の違反が1.9倍に膨れあがったことは、資金繰りの悪化や納税猶予措置の終了が大きく作用していると推測されます。
さらに、粉飾決算の増加も見過ごせません。2024年は20件(前年から42.8%増)と、コロナ禍前の水準に回復しており、借入金の返済猶予を申請する過程で不正が発覚するケースが散見されます。
経営者による不正な会計処理が、苦境から一時的に逃れようとする意図で行われることも多く、結果的には企業の信用失墜と倒産につながっているのです。
株式会社環境経営総合研究所(東京)
- 負債額:246億1,000万円
- 違反類型:粉飾決算
- 詳細:最大の負債額を記録した粉飾決算による倒産で、借入金の返済計画をめぐる不正会計が発覚し、信用が大きく損なわれたとされています。
株式会社BALM(旧:株式会社ビッグモーター)
- 違反類型:コンプライアンス問題(修理の過大見積もり)
- 結果:2024年12月に民事再生法適用を申請
- 詳細:従業員による不正行為が明るみに出て、急激な信用低下を招き倒産に至りました。
広告・調査・情報サービス業の企業
- 業種別で最多の50件の倒産を記録
- 主に広告代理業者やソフトウェア業者が含まれており、デジタルマーケティング分野での不正請求なども一部で指摘されています。
コンプラ倒産が拡大する理由
2024年の急増を後押しした背景は複合的ですが、以下のポイントが挙げられます。

- コロナ禍後の影響
- 2023年以降、国や自治体の支援策が終了あるいは縮小され、支えを失った企業が一気に経営難へ陥るケースが増加。
- 特に税金関連の負担が重くなり、違反行為に手を染めてしまう企業が急増。 - 粉飾決算の増加
- 借入金の返済猶予や追加融資を狙う過程で、過去の不正会計が露呈。
- 一旦発覚すると経営者の信用は回復困難となり、取引先や金融機関が一斉に離反しやすい。 - 産業別の傾向
- サービス業他:104件(前年比57.5%増)
- 建設業:59件(同103.4%増)
- 製造業:39件(同105.2%増)
コロナ禍での需要変動や、サプライチェーンの混乱がきっかけとなり、特定業種での倒産が顕著に増えている。 - 社会の厳しい目
- コンプライアンス違反に対する消費者や取引先の反応が一段と厳格化。
- 発覚後の信用失墜が瞬時に波及し、取り返しのつかない経営危機へと直結する。
今後の展望と企業がとるべき対策
2025年以降も、コンプライアンス違反による倒産は増加傾向が続くと予測されています(参考:
https://news.mynavi.jp/article/20250127-3114954/、
https://www.tsr-net.co.jp/)。
背景には、景気の先行き不透明感と支援策縮小、そして社会的な法令遵守意識の高まりが挙げられます。企業としては、倒産リスクを回避するためにも以下の点に注目すべきです。
- 内部統制強化:不正行為を早期に発見するための内部監査体制や情報共有の仕組みを構築する。
- 外部機関の活用:公認会計士や弁護士など専門家を交え、財務やコンプライアンス体制を定期的に見直す。
- 企業文化の変革:法令順守を「コスト」と捉えず、「信頼獲得の投資」として全社的に意識を高める。
- リスク管理と情報開示:経営リスクを分析し、株主や取引先への開示を適切に行うことで信用の毀損を回避する。
信用失墜は一夜にして企業を破綻へと導きかねません。コンプライアンスがますます重要視される現在、経営者が真摯に取り組むことで企業価値の向上につなげることができるでしょう。
この記事は以下の情報を参考に作成しています:
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1200892_1527.html
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250124-compliance2024/
https://news.mynavi.jp/article/20250127-3114954/
東京商工リサーチ・帝国データバンク・その他各種報道より。

