2025年1月4日、大学受験向け予備校「ニチガク」を運営する株式会社日本学力振興会が、破産申立てを視野に入れた債務整理の方針を発表しました。40年以上にわたる歴史を持つ同社の破産の背景には、少子化や業界競争の激化といった複数の要因が絡んでいます。本記事では、ニチガクの歴史、破産に至る3つの原因、受験産業全体の傾向、さらに親が取るべき対策について考察します。
ニチガクの歴史
ニチガク(日本学力振興会)は、1983年に創設され、当初は地域密着型の小規模予備校としてスタートしました。1990年代から2000年代の大学進学率向上の時期には、高い合格実績を背景に全国展開を図り、一定の地位を築きました。しかし、近年では少子化や教育環境の変化による市場縮小、オンライン教育の台頭など、経営環境の厳しさが増していました。
破産に至った3つの原因
1. 少子化による市場縮小
日本の18歳人口は、1992年の約200万人をピークに減少を続けており、2025年には約110万人にまで落ち込む見通しです。この人口減少に伴い、大学受験産業全体の市場規模が縮小。ニチガクも生徒数の減少により収益基盤が弱体化しました。
2. オンライン教育の競争激化
新型コロナウイルスの影響でオンライン教育が急速に普及。大手予備校はオンライン授業やデジタル教材の開発に力を入れ、全国どこからでも受講可能な環境を整えています。一方で、ニチガクのデジタル対応は後手に回り、競争力を失いました。
3. 経営戦略の遅れ
ニチガクは地域密着型の個別指導を強みとしていましたが、医学部専門や難関大学専門などの特化型戦略を打ち出した他社に比べ、戦略的な差別化が不十分でした。また、固定費削減や事業モデルの見直しも遅れたことで、債務超過に陥りました。
受験産業全体の傾向
各社の対応
大学受験産業は少子化や教育改革に対応するため、以下のような戦略を採用しています。
- オンライン教育の強化
駿台や河合塾は、オンライン授業やAI教材の開発を推進し、幅広い生徒層にアプローチしています。 - ターゲット層の絞り込み
武田塾のように”授業をしない予備校”として自学自習をサポートするモデルや、医学部専門予備校など特化型の戦略が主流になっています。
実例
- 河合塾マナビス
映像授業と進路相談を組み合わせ、地域の需要に対応。 - 四谷学院
“ダブル教育”を掲げ、基礎学力と受験対策を並行して進めるスタイルを展開。 - 東進ハイスクール
オンライン授業の先駆者として、多くの合格実績を持つ。 - 武田塾
授業を行わず、自主学習を徹底的にサポート。 - 秀英予備校
地域密着型とオンラインのハイブリッド運営を強化。
親の対策
1. 情報収集を怠らない
オンライン授業や家庭教師サービス、個別指導塾など多様な選択肢を調べ、子どもに合った学習環境を選びましょう。
2. 教育費の優先順位を見直す
少子化に伴い、大学の定員割れや学費の値下げが進む可能性があります。過剰な予備校通いよりも、自宅学習やオンライン教材の活用も検討するべきです。
3. 子どもの自主性を育てる
自主的に勉強に取り組む習慣を身につけさせることが、どの環境でも成功の鍵となります。
株価への影響と注目点
米国株が急落する中で、1月6日の大発会における日本株市場への影響が注目されます。教育関連企業を含む関連業種の株価動向も市場全体に影響を与える可能性があります。
類似業種の上場企業
- ベネッセホールディングス
- 東進ハイスクール(ナガセ)
- 株式会社リクルート
- 株式会社Z会ホールディングス
- 株式会社学研ホールディングス
これらの企業がどのように市場の変化に対応しているかを分析することが重要です。
まとめ
ニチガクの破産は、受験産業が抱える課題を象徴しています。少子化、教育環境の変化、そして保護者の意識改革が求められる時代に、予備校だけに依存するのではなく、子どもに最適な学びの方法を柔軟に探すことが重要です。保護者としては、変化に対応するための情報収集と判断力が、子どもの未来を切り開く鍵となるでしょう。